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私には自慢のお姉さまがいた。星鈴女学院の中で一番素敵な人だった。学生とは思えないほど気品と、水のように透明な美しさと、とろけるぐらいの優しさがあるお姉さま。あまりにも素敵すぎて、私は一目見ただけで心臓を撃ち抜かれてしまった。そして、ずっとそばにいたい、私を感じて欲しいと思うようになった。それは自然な感情だったと思う。だから、私は勇気を出して、お姉さまに近づいていった。徐々に距離が縮まっていき、一ヶ月も経つ頃には、お姉さまの隣は私の席になっていた。学校ではいつでも一緒にいた。私は幸せだった。この関係がずっと続くと、最低限、卒業まで続くと思っていた。けれど、そうはならなかった。終わりは簡単にやってきた。
お姉さまが変わってしまったのは、小太郎が亡くなったのがきっかけだった。小太郎というのは、お姉さまが可愛がっていた愛犬だ。子犬だった頃に引き取って、大事に、それこそ我が子のように愛情を注いでいたそうだ。私もたびたびお姉さまの家にお邪魔していたが、その溺愛ぶりは気味悪く思えるほどだった。
小太郎が亡くなったのは、お姉さまとの散歩の最中だった。横断歩道を渡っているところに、信号無視をした車が突っ込んできたのだ。幸いと言うべきなのか、お姉さまは軽いケガで済んだ。けれども、小太郎は当たり所が悪かったのか、全身を強く打ち亡くなってしまった。
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