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お姉さまはランプを持って橋の下へ向かっていく。そこは斜面に沿ってゴミの不法投棄場所になっている。テレビや冷蔵庫やソファーなどの大型のゴミや、何が入っているか分からない家庭用のゴミ袋などが捨ててある。お姉さまはゴミの間をぬって斜面を登り、奥の方にある青いビニールシートの前で止まった。シートを手にかけてめくり上げた。シートの下には人間らしきものが横たわっていた。人形かもしれないが、私の位置からではよく分からなかった。
お姉さまは人間らしきものの足を両脇にかかえ、ずるずると引きずりながら戻ってくる。それはあちこちにぶつかったりしても、まったく動く気配がない。やはり人形だろうか。
やがて、お姉さまが戻ってくる。短い距離ながらも息が乱れ、全力で運んでいることが分かる。人形ではない。人間だ。頭にスーパーのビニール袋がかぶせられている。身体の大きさからして男だろう。Tシャツが破れて赤茶けた染みが広がっている。おそらく死んでいるのだろう。いったい誰なのか。お姉さまが殺したのだろうか。
お姉さまはぐにゃりとした死体を白い布と本の上に置いた。やはり身体は動かない。呼吸しているようにも見えなかった。
ランプを近くに置いて、お姉さまは呼吸の乱れが直るのを待った。いきなり死体に蹴りを入れた。三回蹴った。その顔には憎悪がこもっていた。お姉さまを知る人間からしたら、信じられないような顔だった。
私は理解した。お姉さまがこれだけ憎む相手、この死体は小太郎をひき殺した人物だろう。つまり、お姉さまがこの男を殺したのだ。
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