ハレの日

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 私が娘の結婚を素直に喜ばず、悲しんだせいで、雨が降ったのかもしれない。  だとしたら、せっかくのハレの日にかわいそうなことをしたな、と思っていると、ウェディングドレスを着た娘がスタッフと共に近づいてきた。  礼のタイミングや歩き方などの指示を聞き終えると、スタッフは脇に下がった。  娘が私の腕に手を添える。ベールをつけて顔の見えない娘はなんだか別人のようによそよそしい。  ドアが開き、娘とともにお辞儀をした私の耳にポンという音が届いた。  私好みの、16本骨の紺色の傘が開いた状態で差しだされる。思わず受け取ると、司会者の声が聞こえてきた。 「本日は生憎の雨。でも、おかげで花嫁の夢が叶います。花嫁がどうしてもやってみたかったという、お父様との相合傘でのご入場です!」  ポカンと口を開ける私に娘が身を寄せ、照れくさそうに囁く。 「お父さん。いままでいろんな雨風から守ってくれて――ありがとう」  こっちこそ、ありがとう。絶対、幸せになれよ。  言葉には出さなかった。いや、出せなかった。口を開くと号泣しそうだったから。  私と娘は拍手の雨の中、相合傘でゆっくりと歩き始めた。 (終)
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