ハレの日

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ハレの日

「課長。『セルフ父の日』って知ってます?」  バレンタインデーの『自分チョコ』の次を狙っているのか、子どもに感謝してもらえないお父さんが自分でご褒美を買う『セルフ父の日』を百貨店が強く打ち出しているらしい。 「課長なら何を買います? ご褒美に」 「敢えて言うなら傘、かな。だいぶ傷んできたから。でも、百貨店の戦略に乗るのは馬鹿らしいけどなぁ」 「そうですね。それに、課長のとこはお嬢さんがちゃんと気配りしてくれますもんね」 「そうだな」と相槌を打ちながら、そんな気配りは小学生で終了したけど、と心の中で苦笑する。  娘は生まれた瞬間から世界一かわいくて、かなり甘やかした自覚はある。  二十歳をとっくに超えた今だって愛おしい。  甘やかしたい。  食事に行ったり、飲みに行ったりしたい。  でも、「ママよりパパが好き!」と言っていた娘は思春期に突入すると、私を『汚物』扱いして近寄らなくなってしまった。  ここ数年は並んで歩いたことすらない。  お互いに話が理解できず、二人きりになると気まずい雰囲気が漂う。実の父娘なのに。いや、実の父娘だからか。     
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