お悲鳴様のしきたり

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ドンっとものすごい音と共に、数多くの国王に仕える兵士が、王女が隠れていた家に流れ込んで来た。王女の兵士も必死に抵抗するが多勢に無勢。 「やめて」泣きながら王女は叫ぶ。しかし、大勢の国王の兵士は、ただ1人で王女を守ってきた兵士を殴りつけたり、蹴ったりやりたい放題だった。王女は数人がかりで、口にタオルのようなものを入れられ手足も縛られる。自殺をされないように自由を奪った。いくら暴れても無駄だった。 「王女様は絶対に殺すなよ」王女が聞いた最後の言葉だ。何かを嗅がされたみたいだ。徐々に意識が薄れていく。 「お願い。彼を殺さないで」声にならない声が心の中だけで響いた。 目覚めると見慣れた王女の部屋の中だった。ベッドに手足は縛られて、口にも何かを入れられて話すことすら出来ない。 ベッドの横に立っていた、父親である国王が話しかけてくる。 「心配したぞ。お前はこの国の王女様なんだぞ。国民に心配をかけるようなことはするな。まあ、無事しきたりの日に戻って来たのは本当に良かった。明日は重要なしきたりの日だからな。頼むぞ」 そう言うと国王は部屋を出て行った。王女は泣いた。 私の涙でこの世の中がすべて洗い流されたらいいのに。 しきたりの日はやって来た。王女は全く身動きがとれない状態のまま、国で一番深い崖の上に連れて来られていた。 「何か言い残す事はないか?」国王が王女の口に入れてあったものを取って聞いてきた。 「神様。なんで私をこの国の王女としてこの世に生を授けたのですか?」王女は空を見上げ呟いた。国王は無言のまま娘である王女を崖に突き落とした。 物凄い悲鳴が国中に響き渡る。ある子供がお母さんに聞く。 「ねえねえ。これは何の悲鳴?」 「これはね、王女様の悲鳴なんだよ。いいかい?この国は20歳になった王女様は、みんな崖から落ちて身を捧げるのさ。昔からのずっとしきたり。自らが生贄になり国を守ってきたのさ。このしきたりがあるからこそ、国はずっと繁栄し続けてきた。まあ、他の国のやつらは、うちらの国の王女様である、お姫様をお悲鳴様と呼んでいるらしいけどね」
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