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それから私たちはルームシェアをすることになった。私は大学、佳奈美は役者業に没頭していくことになる。二人で同じ場所でバイトしていたから、舞台で忙しい時は私が代わりにシフト入ったり、私の予定がある時は佳奈美が入ってくれたりと、上手いことやっていた。それも私が大学三年生の夏休みまでで、佳奈美がどんどんと有名になっていって、役者だけで食べていけるようになり始め、半年後には佳奈美は役者一本に専念できるようになっていた。
薄い布が被さったみたいな不安を感じたのは、その頃からだった。
感じる度に、これは遠くに行ってしまうから寂しいんだと思うようにして、一緒に住んでるんだから、会えなくなることはないと言い聞かせていた。
今だから思うけど、これは佳奈美の呪いだったのかもしれない。
佳奈美が無意識にかけた、優しくて残酷な。
そんなことには気がつかずに、日に日に重く厚くなる不安を佳奈美に抱きしめてもらって取りはらって、どうにか私はその不安を乗り越えることができた。私は大学を卒業をする時には佳奈美はテレビでも紹介されるようになっていて、テレビに出てる佳奈美と横にいる佳奈美の違いに笑って、へそを曲げられたりしていた。
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