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それでもやっぱり胸の内の暗い火が灯ったままで、これを消すためにと私は仕事をしながら脚本家を目指していた。佳奈美に少しでも近づきたかったからなんだけど、私がなったのは小説家だった。自分でも変だなって笑っちゃうけど、私の書くものを佳奈美が夢中で読んでくれたから、それだけでいいかなって思えてしまった。
それから八年、ありがたいことに、この度映画化を果たしたわけだけど、私の一番の悲劇は、その映画だった。
佳奈美が出演することになったんだ。最後に絶望して死ぬことヒロインとして。
その時にやっと、長年の不安の理由がわかった気がした。
だけど同時に、考えすぎだと笑ってしまった。だってもう大人だ。高校生の頃だったらいざ知らず、もう大人で、そんな危うさはない。一緒に暮らしている私がそう思うんだから、間違いない。
自分に言い聞かせて、誰に相談することもなく事故処理をしてしまった。相談したら何かが変わったかと言われれば、頬を歪めて首を傾げたくなる。
あんなにもあっけなく、私の目の前で起こってしまったんだから。
最後のシーンはその問題の自殺シーンで、念のために服毒に変えてもらった。その方が映えると思うんですよとかなんとか言って。実際、最後まで悩んでいたところだったし。
監督はオーケーしてくれた。そして危険もなく無事に終了したはずだった。
だけど、佳奈美は目を覚まさなかった。
ちょうど、今スクリーンに流れているみたいに。
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