自称神様と俺

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「そろそろ帰らないと、一時間経つぞ。」  2、3歩ベンチから離れて、振り返った小さな指が空を向く。  暗に雨が降ると伝えるそれに促されてスマホを取り出し時間を見ると、あともう10分もすれば15時になろうとしていた。 「あぁ、ほんとだな。」  コンビニまで出るのに5分、何を買うか悩むのに20分、外で食べたいと連れられて近くの公園まで歩いて5分。  それから20分近くも公園でアイスを食べていたらしい。随分とまったりとしていたものだ。 「スマホとやらは、便利だな。」 「ん?まぁ、無いと不便だな。」  今のご時世、学校にしろ会社にしろ、携帯端末は必要不可欠になりつつある。  小学生ですら持っていない子供の方が珍しくなりつつあるなか、そういえばこのガキはそういった連絡手段は無いのか聞こうと顔を上げると、どこか遠くを見るように竦めた眼差しが俺の手元を捉えていた。 「坊主は…」  自称神様の口が数度上下する。  はくはくと繰り返されたそれは魚が餌を求めているようにも、溺れかけた人が空気を吸おうと藻掻いているようにも見えたが、 「なんだよ?」 「…いやーー降り始める前に帰るか。」  結局は、肩を竦めてため息が零れただけだった。
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