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「神様なら俺に頼む前にこのじめじめした天気どうにかしてみせろよ。」
もし出来るものならやってみろという挑発と、できることならこの暑さから解放されたいという願望を込めて畳に転がった自称神様を見下ろす。
俺自身このむしむしとした暑さには弱くて、体が怠くて仕方ない。
つけっぱなしにしていたテレビの中では気象予報士のお姉さんが手作り感満載のボードを前に、しばらくはこのじめじめとした天気が続くと告げていた。
「馬鹿を言うな。そんなのはわしの管轄外だし、梅雨時期の雨と言えば草木の恵みだぞ。敬いこそすれ何を嘆く必要がある。」
顔に貼り付いてくる髪を鬱陶し気に指先で払う自称神様は辛そうであるが、畳に張り付いたまま薄っすらと開いた眼差しは存外真面目だ。
「はっ…そうか!坊主がわしの為にアイスを買いに行けば良いんじゃないか?」
…真面目ではあるのだが、方向性がおかしい。
自称神様は自分の事を【わし】と称するが、見た目が少女なので違和感しかない。
口調も男っぽく偉そうで、仮に少年だとしても整った顔は精々【ぼく】と称した方がすんなり呑み込めるというものだ。
大分慣れてきたつもりだが、今でも時々どきりとさせられる。 主に、外出時に。
俺がそう言わせていると世間様から思われるんじゃないかとヒヤヒヤするという意味で。
「なんでこんな天気の中で俺がアイスを買いに行かねぇとなんねぇんだ。」
「まだ降るまで時間があるとお姉さんも言ってるし、今から急いで行って帰ってくれば雨に降られる心配はないぞ!」
雨に降られる心配だとかそういう問題ではないのだが、小さく細い指を追って指されたテレビを見る。
そこでは傘をさした気象予報士のお姉さんが、これから一時間程度で雨が降るので今から出かける人は傘を忘れないよう促していた。
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