自称神様と俺

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「ダッツ様はやっぱりバニラが一番だな!シンプルイズベストってやつ!」 「さいですか。」  結局、俺一人では信用ならないからと言って買い物に着いてきた自称神様は、コンビニで散々悩んだ挙げ句にバニラのカップアイスを嬉々としてレジに持っていった。  何に悩んでいたかと言えば、大道のバニラか期間限定もしくはコンビニ限定の少しリッチなもののどれにしようかというもので、冷凍コーナーでたっぷり20分かけて選ぶ様子は見た目年齢相応に思えたが、隣で待ちぼうけを食らう俺までつられてアイスを食べたくなってしまった。  よってアイスをすくったスプーンを咥えたまま足をばたばたと動かす自称神様の隣に座る俺の手元に、ひんやりとした冷気を纏うソフトクリームがあるのはなんらおかしい事ではない。  レジで支払いを待つ自称神様からはにやにやとした視線を向けられたが、自分の金で買うのだから、他人の金でアイスを食べようとするガキに何を言われようが気にすることはないはずだ。 「(店員からは変な目で見られたけど…)」  自称神様の見た目のせいか、眼鏡の向こう側からじろじろと観察するような目を向けるコンビニ店員の視線を無視して購入した、渦を巻くチョコとバニラがミックスしたソフトクリームにぱくつく。  そうすると口の周りにべったりと付いてしまったので服の袖で乱雑に拭い取り、口内に収まったアイスは熱でじんわりと溶かしていく。 「うん、うまい!坊主も、買って良かっただろ?」 「まぁ、たまにはな。」  成長して味覚が変わったからだろうか。じめじめとしてはいるもののまだ眩しい日差しに晒されていないからだろうか。  飲酒をするようになってから量を減らした糖分は記憶のなかのそれよりも冷たく甘く、子供の頃のように幸せな気分に浸る。
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