自称神様と俺

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「いつか期間限定のやつも食べたいなぁ。明日また買いに行くというのはどうだ?」 「阿呆か。今日は特別だ。」  空には分厚い雲がどこまでもたちこめ、空気はじめじめとした湿気を含んでいた。  休日だからかもしれないが、そんななかでも公園にはちらほらと人の姿があって、砂場で遊ぶ子供や、傍で雑談に花を咲かせている母親を何とはなしに眺めてみる。 「特別なら仕方ない。また次の機会を待つとするかな。」  肩を竦めてあっさりと引いた自称神様は、再び顔を綻ばせながら小さな木板の棒でアイスを掬う。  親というのはこうした子供の笑顔一つで、また喜ばせてやろうという気持ちになるのかもしれない。  幸せそうな笑顔を目の端に映しながら、少しずつ表面が崩れ始めたソフトクリームに再びかぶりついた。 「(…って、いや、次があるのかよ。)」  アイスを食べているのに、少しだけほっこりとした心にハッとする。  まだ俺とアイスを食べる機会があると踏んでいるということだろうが、自称神様が俺の家に居座ってから早くも一週間が経っているのだ。  何を目的にしているのかも、一体いつまで居座るつもりなのかも分からないが、俺も俺で何を普通に聞き流しているのか。  ここはひとつ、大人の威厳を見せるべきだろうと、なるべく大人の余裕を見せるようにふんぞり返ってみる。  公園のベンチでというのが少し格好つかないが、背もたれに腕を乗せて腹を仰け反らせると背筋が伸ばされてなかなか気持ちがいい。  腕を上に伸ばせば自然と声が出てきそうな気がして、とりあえず口を開くと「あ゛ー…」と腹の底から這うような声が出てきた。 「…それで?神様は帰らなくていいのか。」  神様が帰る場所か何処かは分からないが、思い付くとすれば空の上だろう。  ふと尋ねてみたのは、もしかしたら空に雲がかかっているから帰れないのかもしれないと思い付いてしまったからで、そのメルヘンさに眉が寄る。
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