0人が本棚に入れています
本棚に追加
ベンチに並んで座ってアイスを食べる俺たちは、周りからはどう見えているのだろう。
流石に兄弟には見えないと思うので親子だろうか。
隣人同士の接点だとか関わりが無いに等しいので、いきなり現れた自称神様についてボロアパートの住人からはまだ何も聞かれてはいないが、それも時間の問題のような気もする。
自称神様の見た目があまりに日本人からは遠いので、誘拐だとか監禁だとか、何かしらの事件性を疑われる可能性を考えると気が気ではないのだが、1週間経った今もこうして平和な昼下がりを迎えているということは、誰も通報などはしていないと考えて良いのだろう。
「おれはな、待ってるんだ。」
「…待つ?」
「あぁ。坊主が思い出すのを、な。」
「…俺?」
変な事を言うガキだ。
いや、最初から自分を神様だと言う辺りからして変な事しか言っていない奴だったが。
自称神様の口が再び開かれ、早くもとろとろとしたクリーム状になりかかっているアイスが吸い込まれる。
薄く桃色に染めたぷっくりと丸い頬の内側で、今まさにゆっくりと溶けているのだろう。
目を瞬かせる俺はあろうことかそれに見とれてしまって、一体俺が何を忘れているのかと聞くタイミングを逃してしまった。
自称神様がアイスを味わい堪能しながら飲み込むまでの間、数回口を開いて結局は空を仰ぐに留まった俺のいたたまれなさたるや。
「ご馳走さまでした。やはりアイスはダッツ様だな。」
そしてその間に、自称神様は残りすべてが液体になったらしいアイスを口の中に流し込んで綺麗に食べきってしまった。
全て綺麗に取ろうとする姿を目の端で眺める俺は未だに空を仰いだままで、空になったカップに向かって手を合わせている姿を【神様の癖に】と心の中で笑い、そして神様の癖にだなんて思ってしまった自分自身を笑った。
最初のコメントを投稿しよう!