0人が本棚に入れています
本棚に追加
やはり、俺にはこのガキが神様だとは思えない。
あまりに突飛な事で結論までに時間がかかってしまったが、このガキの言うことを真に受けていることがまずおかしいのだ。
「俺が何を忘れてるってんだよ?」
おかしくて可笑しくて、嘲笑と自嘲を含めて吐き捨てた声は、どこか空しく空気に溶けていった。
…体を屈めた自称神様に、覗き込むようにして見つめられているからだろうか。
「本当に分からないのか」と探っているようにも見える瞳は深淵に引きずり込むような黒色で、居心地が悪くなって目を逸らした。
「(一体、なんだってんだ…?)」
どうして俺がバツの悪い気分にならなければならない?
どうして俺が後ろめたい気持ちに苛まれなければならない?
納得がいかず不満に思う気持ちを抱きながらも不明瞭なそれは曇り空のように心の中で重たく揺蕩っていた。
自分の感情が分からないのは気に入らないもので、何とか捕まえられないものかと眉を寄せた俺の質問に、自称神様は答えるつもりがないらしい。
「食べないのか?アイス。」
幼い体で覗き込んだまま、腕を伸ばして人差し指が示す先にはどろどろに溶けたソフトクリームがぼとりぼとりと茶色のベンチを汚していた。
「うわっ!?やべっ!」
掌どころか腕までを伝うクリームに気付かなかった自分に呆れるしかない。
慌てて口を付けた俺を自称神様はからからと陽気に笑い、小さな体はベンチからぴょんこと立ち上がった。
最初のコメントを投稿しよう!