邂逅

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関羽の考えを読んだのだろうか。その者は一瞬何事か考え、剣を腰に差していた鞘に納めると二人に背を向けて歩き出した。 「お、おい!」 張飛はその背に声を掛けるが止まる気配はない、張飛はどうしようかと関羽の方にチラッと視線を送ると関羽は首を横に振った。 するとその者はピタリと足を止めて頭だけ振り返る。 『フッ――…時代の子らよ、今は只進め。我は主より授かりし‘国士無双(こくしむそう)”の栄誉と剣以外は全てを捨てた者、故に名は好きに呼べ』 「「?」」 『さらばだ。何れまた会うであろう……』 そう言い残すとその者は今度は振り返る事はせずに真っ直ぐに進んで行った。二人は追う事はせずに黙ってその者の姿が消えるまでその者の堂々とした姿を見つめていた。
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