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月や星が雲に覆われて暗い夜、電灯だけが道を微かに明るく照らしている。
そんな場所を少年は全速力で走っていた。
「うわっヤバい、店長の嫌味攻撃が…」
少年は走りながら腕時計を見る。時刻を見ればとっくにバイトの時間を過ぎていた。
前日に学校から帰ってからゲームのしすぎで寝坊をしてしまった少年、しかもそんな時に限って自転車のチェーンが切れたり、買ったばかりの靴の紐が切れたりと不運の連続であった。
「…大丈夫だよね…うん」
暫く走っていた少年は一瞬躊躇うが、意を決して近道である墓場を通る事とした。
「…こわっ……」
自然と速度を落とし、墓場の中を通る少年。
左右を見渡せば一面の墓。
昼間でさえ不気味なのに、今は携帯電話の明かりだけを頼りに少年は前に進んでいる程暗い。
……少年は半ば程まで来て、今更ながら引き返そうかと足を止めた。
すると―――
「!?」
少年の耳に、何か足音が聞こえて来た…背後から。
「うわあああああああっ!!」
そう言った事には臆病になってしまう少年は再び全速力。
しかし、背後から聞こえてくる足音も同じ速さでずっと追いかけてくる。
「うわあああ!!たす――
『……ごめんなさい』
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