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『…温い』
――はれっ?」
その者はヒラリとそれを躱すと刹那、目の前の男の首を刎ねた。男の胴体と頭は力なく地に崩れ去り、騒がしかった周りは静寂に包まれる。
「…てんめぇ、よくもやりやがったな!」
「やっちまうぞ!」
「おぉ!!」
一瞬の静けさの後、手下達は怒声を発しながら謎の乱入者を取り囲む。
『…多勢に無勢、されど我を穿つには遠く及ばず』
「はぁ?」
「ぎゃははっ、馬鹿か!」
数の利に油断していた彼等は取り囲んだ今、謎の者を舐めきっている。
唯一二人の少女はゴクッと生唾を飲み込み、遠巻きにその者から一瞬たりとも目を離さなかった。
「てめぇら!やっちまえ!!」
「「「おぉ!!」」」
男の合図で取り囲んでいた者達は各々の得物で斬りかかった。しかし、謎の者はそれを気にする素振りすら見せず、ただ真っ直ぐに歩き二人の少女の方へと進む。
襲って来る者達を最小限の動きで殺しながら、悠々と。
「ぎゃっ!」
「ぶべらっ!!」
「ぐっ!!」
「――…な、なんなんだ!てめぇは!?」
「「……」」
無残に横たわる無数の死体。総面を被る者は全身返り血によって鬼の如し格好となっている。
残された男とその僅か後ろに居た二人の少女はどちらも呆気にとられていた。
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