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「おーい。仁君」 「やめろ三塚。プレアデス星団が見えないだろう」 「宇宙旅行の邪魔して悪いけど教室に戻って来て。文化祭、プラネタリウムにしようって――」 「断る。夏休みは忙しい。スターウィークとペルセウス座流星群に」 「あ、もういいデス」  思わずごめんねと続けたくなる断固とした口ぶりに、だそうでーっす、と報告した。  工藤は怖い顔のままだ。  仁野が神様なら、あかりは御使いと呼ばれている。  神様との中継役、兼通訳。  なぜこんな役回りかというと、今は神様の席の隣で、前回の席替えまでは後ろに座っていたので、まあ、そこそこ良い隣人付き合いが築けているから、だろう。  あと、名前も似ているからかも。みつか、と「おつかい」「みつかい」。  休み時間はいつも、難しそうな本を読んでいて、思考は常にそっち側にあるのか、話しかけてもほぼ星の話になるのでとんちんかん。  あかりも最初は意思疎通の取れない日々だったが、最近はかなり理解が出来るようになった。 「だそうです、じゃねえよ。役に立たねえな」 「だってほら。神様の方が偉いから。しょうがないよ。ね?」 「そうだな」  所詮、ただの通訳なのだ。ちなみに同意を求めた仁野は、頷いていても聞いていない。ただの反射だ。この協調性のなさも、神様とか呼ばれてしまう原因の一つだ。  
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