初デート

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初デート

1時間の残業で仕事を終え、急いでスマートフォンを手に取り画面を確認すると1件の着信履歴があった。会社のすぐ近くにある小さな公園に立ち寄り着信を折り返す。3コールを聞き終える前に途切れた呼び出し音と、耳を擽る優しい響き。 『ユウ』 間髪入れず僕の名前を呼ぶ声に、思わずホッと気持ちが緩んだ。 この1週間はキリトとの時間が合わず1度も会えなくて、せめて週末は一緒に過ごそうと約束をした。仕事を終えた金曜日の今日これから、日曜日の夜までキリトと色んなことを楽しむんだ。 「遅くなってごめんね。今、大丈夫?」 『もちろんだよ、仕事は終わった?』 「うん、残業で遅くなっちゃって、連絡もせず待たせてごめんね」 『お疲れさま。大丈夫、ホテルのラウンジで待ってるよ』 「どうしよう……」 『ユウ?』 「ホテルでの食事は予約だよね?まだ会社から出たばかりで、着替えに戻るとどう考えても間に合わないんだよ」 少しの間の沈黙。そしてキリトは妙案だとばかりに言ったんだ。 『ユウ、そのままおいで』 「え?」 『ホテルの中に懇意にしてもらっているテーラーがあって、僕はそこで着替る予定だからユウも一緒にどうかな?』 「でも……」 『ユウ、早く会いたいんだ。今どこ?迎えに行っていいかな?』 「あっ、あの……ホテルへ行くよ!」 『待ってるよ、気をつけて』 電話を切り、足早に大通りへ出てタクシーに乗りホテルへと向かう。 僕だって、早く会いたい……会いたくて、たまらないんだ……
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