α

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α

αの中でも飛び抜けた頭脳と身体能力を持ち、最上級とされる稀少種。彼らは人智を超えた能力すら有していた。 僕は、その稀少種として生まれた。 僕も所有している特殊な能力。それは人の記憶を操作したり、僕の言葉で人の行動を自分のものにしたり。あぁ……傷を舐めると治る、というのもあったな。この辺りは稀少種なら誰にでも備わっている。 ただ、僕には、もうひとつ特殊な能力がある──『βをΩにする能力』だ。 世界が望んで生み出した稀少種の能力だが、僕にとっては何の価値もない。 生きて行くには邪魔なだけの能力でしかない。 この世界を守る?なぜ?守りたい理由なんて僕にはないのに。 ただ『稀少種の責務』を果たす為に最低限のことをするだけだ。 《αの中でも最上級》その立場と能力のせいで、物心付いた頃から周りには僕を利用しようと目論む、汚い心の人間ばかりが寄ってきていた。 どんなに綺麗な姿をして綺麗な言葉を並べても、稀少種の僕にはわかってしまう。 ただ、僕を利用したいだけなんだと。 αにとって必要不可欠だといわれているΩなら僕の渇きを潤せる? 僕には分からない。 どんなΩも『僕』を見てくれることはなかった。 誰一人として僕の渇きを癒してくれるΩはいなかった。 僕の喜怒哀楽は徐々に薄れて行き、毎日を淡々と過ごすだけになっていた。 それは、僕にとって、稀少種であることを呪うくらいに砂を噛むような……味気のない、軋んだ日々。 僕が普通のαなら、Ωは純粋に僕を求めてくれただろうか…… 僕がβなら、僕自身を愛してくれるβに出会えるのだろうか…… 『僕』を必要としてくれる人なんて……いるのだろうか…… もしも……【稀少種の僕】を【ただの僕】として純粋に受け入れてくれる人が存在するなら、この腕に抱いてみたい…… 僕は夢見ているんだ……僕の運命の人との出会いを。
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