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墓参りを終えてその場から立ち去り、帰路についた。
しがない小規模ビルの3階が、俺の住居兼仕事場だ。
一応ビルだがエレベーターはなく、あるのは赤錆に侵食されつつある古びた階段のみ。
ガチャリと鍵を開ければ、いつもの散らかった事務所がお出迎えだ。
「やっべ、燃えるゴミの日って今日か……また忘れた」
床に散乱するカップ麺の容器やコンビニ弁当の蓋、割り箸を無造作に地区指定のゴミ袋へ突っ込んでいく。
大抵食事はレトルトやコンビニ弁当、栄養補助食品で済ませる。
そしてそのゴミは床や机に置きっぱなしにし、いつの間にかゴミで溢れかえっているのが現状だ。
家事ができないほど多忙なわけでもないし、むしろ暇だ。
ただ掃除をするのが億劫で、後でまとめて捨てる、後でまとめて……というのが積もり積もった結果だった。
俺に嫁がいれば少しマシになるんだろうな、と思ったが悲しいかな、26年間彼女なし。
せめて掃除や洗濯、炊事もできる家政婦でも雇えたらと願うものの、そんな経済的余裕はない。
なんせこの事務所はそう、経営難なのだから。
依頼が一つもないとなると、ニート同然の状態だ。
父の残した貯金で何とか生活しているものの、このままでは貯金も底を尽きてしまう。
「手っ取り早くでっかい事件とっ捕まえて解決できたら、事務所の評判上がるよなぁ……」
そう呟いた直後、ぐぅーっと腹の虫が鳴き始めた。
「……まずは飯だな」
俺はスラックスの尻ポケットに古い革財布を突っ込むと、行きつけの定食屋へ向かった。
冷蔵庫は確認するまでもない。
どうせ使いもしない調味料と麦茶しか入っていないのだ。
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