0人が本棚に入れています
本棚に追加
悔しい程美しく咲いたシロツメクサが、花冠のように友人の目元を覆っていた。
「……おおおっ」
私はもう堪らなくなって、あまりに美しいそれを憎むことも出来ず、むしり取る事もせず、声とも呻きともとれない何かを叫びながら、ぼろぼろと泣いた。
シロツメクサ。
友人が持っていた、花の本の一節。
その四小葉は「四つ葉のクローバー」と呼ばれ、幸運を運ぶとされている。
名前も知らない、毒々しい色をした花ならどれ程よかったか。
きっと友人はすべて分かっていて、私に頼みごとをしたのだ。
その約束を呪いと知っていて、あんなに悲しそうな顔をしたのだ。
私はこれから、この花を見るたび、呪いのように、この耐え難い悲しみを思い出すのだろう。
穏やかな表情で眠る彼に、私は行き場のない感情とともに縋りついた。
白い花は雫を受けて、微かに揺れた。
外ではまだ、さあさあと静かな雨が降っていた。
最初のコメントを投稿しよう!