第二章 原因

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親友が見直されてあたしも鼻が高い。ニマニマしながら前屈していると、 「調子乗ってんじゃねぇよ」 低い声が耳に入った。 真紀を囲む輪から離れた所で南部長がいつものように腕組みをして立っていた。 真紀に聞こえたかどうかはわからないけど棘のある声だ。 入ってみて改めて、南部長は群を抜いて上手い事がわかった。 どんな動きも難なくこなし、激しいアクロバットも軽々とやってのける。 小柄なのに一つ一つが様になっていて誰より目立つ。幼稚園から新体操をやっていたというのも、伝統あるこの部の部長に満場一致で選ばれたのもうなづける。 けど、南部長は見学初日から変わらず真紀が気に入らないようだった。 「柔軟ぐらい出来て当然だろ。マジムカつく、あのデブ」 南部長と行動を共にしている多田先輩と林先輩が続いた。 「本っ当、デブだよね」 「メタボがチアとかウケる」 関節を回していた真紀が一瞬動きを止めた。真紀の周りにいた子達も急に静かになる。聞こえているようだ。 「各自水分補給したら最初の動き確認するよー!」 空気が重くなるのを察して、辻先輩が声を張った。 固まっていたみんながはっとして、切り替えるように「そうだ、飲も飲も!」と水筒やペットボトルを置いた場所に移動する。 あたしも体育館内の隅、真紀の隣に走った。 「真紀、大丈夫?部長今日も虫の居所悪いみたいだね…気にしない方がいいよ」 「うん…さっきのなら平気」 言いつつ、目の端が潤んでいる。 タンブラーを傾ける姿を見て、部長は今度は舌打ちをした。
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