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真紀が太っているのは昔からだ。
ご両親もぽっちゃりしてるけど、遊びに行った時出されるおやつや夕飯の量は普通だ。
普通じゃなかったのは何種類も常備されている飲み物だった。
常にあるのは麦茶だけだったあたしの家とは違い、沢村家にはドリンクバー並みに豊富な種類の飲み物の中から好きな物を好きなだけ飲む習慣があった。お父さんのワイン好きがきっかけらしく、好きな飲み物をグラスに注いでから食卓につくのが幼稚園の頃から続いているという。
そのせいか、真紀は家の外でまで好きな飲み物を持ち歩いていた。
「沢村さん、持って来ちゃダメって言ったでしょう?」
小学生の頃から登校途中に飲み物を買い休み時間に飲むのを繰り返していて、見つかる度に注意されていた。
小・中共に夏の暑い日以外水筒の持込は禁止だ。自販機やコンビニで買った缶やペットボトルをそのまま携帯する真紀は当たり前に叱られた。
お金持ちの上に一人娘を思うお父さんが毎日お金を与えているので親を呼んでの話し合いは意味がなく、飲み物の事を除けば真面目で大人しい真紀をそれ以上キツく叱る先生もいなかった。
叱られても翌日にはまた買って来て飲んでしまう。
バカ騒ぎしながら授業中にお菓子を食べる不良と違いそこまで目立たないし、叱られても翌日にはまた買って飲んでいるのでいつしか周りも何も言わなくなった。
暗黙の了解とでも言うのか、真紀が飲み物を携帯するのは当たり前の光景になってしまったのだ。
真紀が好むのは甘いジュースだ。お金持ちの沢村家に何種類もある色とりどりのフルーツジュースの中からその日のお気に入りを水筒に入れて来て飲み、果物の風味に飽きると自販機やコンビニで別のジュースを買って飲む。
真紀が太っている原因は食べ過ぎでも運動不足でもない。ジュースが手放せないせいだ。
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