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「いっつも何か飲んでない?どうせ中身ジュースとかでしょ、それ」
指差され、顔を赤くしてタンブラーを隠すように寄せる真紀。
中学の頃から愛用している特大タンブラーだ。きっと今日もフルーツジュースが入っている。
「昨日の部活もおかしいと思ったんだよねー。何本もペットボトル置いてある場所があったから何人かがまとめて置いたんだと思ってたら沢村さん一人で三本もとって行って、タンブラーの中身飲んでからまた飲んでたもん。見てる方が具合悪くなりそう」
テーブルに出してはいないけど今朝もタンブラーとは別にオレンジジュースを買って飲んでいた。
ずっと目をつけていたらしい南部長は真紀の欠点を的確に言い当て、非難する。
「長谷部さん、昔から仲良いんでしょ?ジュースばっかり飲んでてデブる一方の親友を放置ってヤバくない?」
華奢な腕を組む部長に真紀の肩が細かく震える。俯いた顔は上げないままだ。
「だから、真紀を悪く言うのはやめて下さい!」
大きな声を出すと、食堂内の何人かの視線が集まるのを感じた。けどこれ以上言わせる訳にいかない。
フルーツジュースも炭酸飲料も、要は液体に溶けた大量の砂糖だ。一日に何回も摂るのは良くない事ぐらい真紀だってわかっている。
中学の時、「やっぱり良くないよ。小学校より校則厳しくなるし、やめちゃわない?」と言ってみた事があった。
『今日はジュース飲まねぇの?』
『ダイエットだとしたら手遅れじゃね?』
午前中からずっと耐え、辛い中迎えた五時間目の休み時間での事だった。みんな空気を読んで触れずにいたのに、二人の男子が部長と同じようにバカにしたのだ。
たったそれだけの悪口だったけど、真紀はその場で泣いてしまった。
教室を飛び出した真紀は休み時間中に戻って来たが、その手には苺ミルクのペットボトルが握られていた。見るからに甘ったるいピンクの液体を飲み干して漸く泣き腫らした顔に柔和な表情が戻るのを見て、無理にやめさせるのは逆効果だと悟った。
取り上げられても暴れたりしないし、依存症とまではいわない。けど物心がついた時から根ざした習慣は簡単には変わらない。
それ以来あたしはジュースについては何も言っていない。チア部のみんなも何かを察してか何本ものペットボトルには触れず普通に仲良くしてくれている。
「これから何とかします。部長には迷惑かけません」
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