宮殿

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私の時代と違って、国王は名ばかりになって政権から遠ざけられた時代のさなかに彼女はいる。名誉革命が起こり、父と姉夫婦の狭間で揺れる彼女は、父を見限るのだ。そうかといっても、姉とも仲良くない。幽閉されていた彼女を助け、父と姉夫婦に仕える寵臣の末裔がこの国を牛耳るとは思ってもみなかった。 姉夫婦の死で即位した彼女は、政治は議会任せにして自らは文化振興に努めた。彼女の子供たちは成人せずに亡くなった。彼女は肥満した体で短い在位を遂げる。旨いものを飲み食いできただけでも幸せなはずだが、彼女の気持ちは私にはわからない。ロンドン塔へ送られた私よりも良い見送られ方をした彼女も寺院へ入った。 私は、宮殿と共に次の時代へと移動する。彼女の死でハノーバー朝になっていた。ドイツ語が飛び交う宮殿で生まれた女の子は18歳になると即位する。もし、私の娘が子供を産んでいたら今でも血統が保たれていたかもしれない。 厳格な性格を持つ女王が長きに渡って世界に君臨するとは私の時代では考えられなかった。戦争をしながら勝ち取った領土がこの国に繁栄をもたらした。娘も女ながらに戦争して国を強大にした。 この女王は子宝にも恵まれて、娘たちを降嫁させることで他国との同盟を結んだ。私の時代には無かった蒸気機関が繁栄を助けている。私の理解を超える学問も進化を遂げた。厳格な割に気分屋でもある彼女は女王としての品格があるのかは疑問である。     
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