宮殿

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彼女が次の世代に時代を明け渡してから、良くも悪くも物質的な進歩が進む。それが、使い方次第では人々の生活を豊かにしたり、大量殺戮したりする。少なくとも、私の時代では科学というのは無かったように思う。 今度も娘と同じ歳で即位する女王が現れた。この女王も時代に翻弄されながら子宝に恵まれた。鉄の塊の中に入って移動する世の中で生きる彼女にも煩悩がある。彼女が出かける所は、海の向こうどころか街の外すら出たことない私の想像を超える。 女同士の戦いしか知らない私には、公務とは何のことかわからない。子供を産む道具でしかなかったので、そこまでの知識や品格など身についてない。 この女王が口にする王族のしきたりは、少なくとも私の時代にはない。ハノーバー朝の誰が始めたのか、私の理解を超えるしきたりに縛られているのが当世の王室である。そこへ碧眼金髪の女性が嫁いできた。 あの最後のスチュアート朝女王を助けた家臣の末裔である。この妃が産んだ王子が国王となるのだ。我が国の血を引き継ぐ王室に戻していくこの王に私も期待を寄せる。私はこの国母が気になる。 私は姦通罪の汚名で消されたが、彼女はそれを実行しながら処刑されなかったばかりか厚葬さえされている。してない事で理不尽な目に遭った私からすると腑に落ちない。     
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