初恋

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始まりは2年前、気の早い桜が咲き出して初春の青空が広がった。 昨日無事に入学式を終え、春の陽気に誘われて少し早めに学校に来た。 教室のドアを一歩入ると、抱き合う男女の姿...。 思わず手に持っていたスクールバッグを落としてしまった。 慌てた様子の男からバッと身体を離して、こっちに走って来た女の肩が俺にぶつかり、ヨロけた泣き顔と目が合った。 今井乃亜。 同じ中学出身だけど、まともに話した事はない。休み時間は一人で本を読んでいる様なおとなしい奴で、まさか教室で担任と抱き合ってるなんて想像もしなかった。 そう、男の方はうちのクラス担任で小松崎昌浩25歳。 この4月から着任したばかりで専門は英語。メガネの似合うインテリ系だ。 呆然と立ち尽くす俺の所に小松崎先生が青い顔して近寄って来た。 「えっと、武村、だったな。今のは違うんだ。今井がヨロけたところをとっさに受け止めただけで...」 「別に、誰にも言わないっすよ」 必死に苦しい言い訳をしてるけど顔に嘘だと書いてある。 カバンの埃を払い、落ち着こうと深呼吸を一つして席に座る。 今井が戻って来たのは始業のチャイムが鳴る直前だった。
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