初恋

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町は静かで、普段より人通りが少ない。 大通りを挟んだ向こう側、雪にかき消されてハッキリとは見えないけど二人組の男女が目に留まった。 手をひかれながら一歩下がって歩く女に見覚えがある。 見間違えるはずなんてない、慣れ親しんだチェックのマフラーが風になびいてる。 自分の目が信じられなくて震える手で携帯の履歴を押した。 「はい」 「…今井、どこにいる」 「え…、家だけど。急にどうしたの」 「いや、雪が酷くなってきたから病院行けたかなと思って」 「ありがとう、大丈夫だから」 「なら良かった。じゃあまた明日学校で」 「うん、ごめんね…」 そして電話が切れた。 目の前の女も携帯をポケットにしまってまた歩き出した。 俺、嘘つかれた…。 ごめんって何だよ。ドタキャンした事か。それとも小松崎と手をつないで歩いている事か…。 不意に今井が両手で顔を覆ったのが見えて、小松崎が優しく抱き寄せる。 それ以上耐えられなくて、見たくない現実に背を向けて家までダッシュで逃げ帰ったんだ。 次の日、いつもと何も変わらない様子で笑ってる今井。 見間違いだったんじゃないかって希望と、この笑顔も嘘なんじゃないかって思ってしまう自己嫌悪で一日中気分が悪い。 「一也君、大丈夫?」 頭を抱えて座り込んだ俺の背中をそっとさすってくれる温かい手。 荒んだ心が落ち着いて、唯一残った真実だけを口にした。 「俺、乃亜が好きだよ」 見つめた瞳は驚いた様に見開かれたけど、すぐに大好きな笑顔に変わって、背中にあった乃亜の温もりが俺の手に移動した。 「私も一也君が好きだよ」 その手を引いて抱きしめた。 強く抱いたら折れてしまいそうな今井を、俺は誰にも渡したくないんだ…。
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