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目に映るマジックアワーの景色が、きらきらと輝いていた。夏の景色は輝いて見えるというのは、こういうことなんだと僕は思った。
そう、その夏は、そんな輝きに満ちていた。高校に進んでも、この輝きを忘れないでいよう。そう誓った。
それが、僕がみた最初の夏の輝きであり、最後の夏の輝きでもある。
あの後、僕は高校に進み、映画を本格的に、ということはなく、普通に学生生活を過ごし、卒業した。もちろん、あの公園にも行かなかった。
小学生から中学生に進むときに精神性に大きな変化があるのと同じように、高校に進んだ時にもある感覚が芽生える。それは、自覚というやつだ。
社会というものを意識し始めるとも言えるかもしれない。自分の立ち位置や、将来のことを考え始める。義務教育という枠から外れ、ある意味で社会というものの数歩手前に立つようになったからなのかもしれない。
僕は、映画を遠ざけた。いや、映画が遠ざかったのかもしれない。
映画が与えてくれた輝きが、ある日ふと見えなくなってしまった。
それは僕が大人になっただとか、そういうことではなく、映画が僕を見放したのだと思っている。
時間がなくても、映画は観れる。
将来のことを考えるにしても、映画をみる時間はある。
優先順位を設けて、それを逃げ道にして、僕は映画を遠ざけた。
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