輝きもいつかは

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 アート映画に関しては、テーマとか、奥深い内容だとかそういうことは理解していなかったろうと思う。小学生や中学生に理解できることなんて、この場面かっこいい! といった感情論的な見方だけだろう。いや、僕はそうだったということだけなのかもしれないが。  とまあ、そんな風に映画ばかり観てきて、中学に進んだ。  面白いもので、小学六年生と中学一年生では、精神性が異なる。たった一年しか変わらないのだけど、制服を着て、新しい環境に身を置くと、考えることや面白いと感じることに変化が生じてくる。それはたぶん六年間で無意識に蓄積したものや、意識的にやってきた何かが結びついて、花開いたということなのかもしれない。  もちろん、僕の場合は映画だ。  中学生になり、真っ先に家から少し離れた総合市民図書館へ行って図書カードを作った。家から近くの図書館のカードは持っていたけど、蔵書に大きな差があり、なにより、映画関連の資料や雑誌が申請して読めるものを含め、とても充実していたのだ。  毎日のように、僕は図書館へ行き、貸出不可の資料を読み、借りた本を家に帰り読み、学校でも本ばかり読んでいた。  自分でも映画を撮りたいと思い始めたのは、中学最初の夏休みだった。  クラスメイトが夏休みの予定をあれやこれやと話し込んでる時に、僕は一人、自分の映画を考えていた。  梗概(あえてあらすじとは言わなかった)をノートに書き連ね、絵コンテを書き込んだ。     
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