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風と共に去りぬ
彼女は何時も紅い装束に、瞳許と額に紅い化粧を施され、生きる女神、クマリとして社の最奥に鎮座していた。
クマリとして存在するその姿は、神々しくもあり、儚くもあり、花弁の先端が紅く染まった白い蓮の様だった。
産まれて直ぐに母親が亡くなり、その他の親族も存在しなかった為、赤児を養育する者が居なかった。
赤児を見殺しにする事も出来なければ、老い先短い自分の私的な養子にする事も出来ない。
この赤児を公的に養育する為、村長はクマリとして育てる事を決めた。
そうすれば、信心深い村人からの布施により、この赤児の生命は現世に繋がれる。
そして、多少の罪を犯したとしても、功徳を積んだとして、減刑されるのでは無いかと、この赤児は、生け贄として生かされた。
さて、この赤児を生かし続けるには、先ず、クマリに選ばれなくてはならない。
それには黒い髪に瞳、牛の様な睫毛、鹿の様な脚、菩提樹の様な躰、健康で在る事等、合計32もの条件が在る。
その中でも取り分け厄介なのが、動物の頭部が並べられた暗い部屋に閉じ込められても、精神に異常を来さない事だったが、赤児故、何も理解出来ず、唯眠っているだけだった。
赤児は32の条件を総て満たし、晴れてクマリとして村人に迎えられた。
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