貢ぐ男

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 私には“いい男”がいる。いい男といっても、高級な身分という訳でもなく、外見がいいという訳でもない。むしろ、その反対だ。いつも、古着を編んだようなみすぼらしい服を着ていて、顔つきもよくない。醜男というほどではないけれど、見てて好感度を受ける顔つきでないことだけは言えた。  だったら、どうして、そんな冴えない男が“いい男”になるのか。その理由はたった一つ、男は私に貢いでくれる。他の男は私のお願いを少しは聞いてくれるけれど、時間の経過と共に貢ぐのをやめてしまう。けれど、この男だけは違っていた。私がちょっと頼むだけて、なんでも用意してくれる。“なんでも”とは文字通り、なんでも。前に私が冗談半分で、 「高級車が欲しい」と言ったら、十分も経たない内に私の前に、私名義の海外の最高級の車を用意してくれた。さすがに、免許は持っていないし運転することができなかったので、 「やっぱり、車はやめて。最新モデルのスマートフォンが欲しい」とおねだりを変えてみても、男はすぐに車を売却して入手が難しいはずのスマートフォンの最新モデルを用意してくれた。  男はそこまでして、私に好かれようと必死だった。男はなんでも用意してくれる。ブランド品のバックも、服も、宝石も私が願えばすぐに用意しくれる。もちろん、お金でも。  だけど、私は男に好意を抱くことはなかった。男はいうならば、私にとっての青い猫型ロボットのような存在。いや、それ以上に便利な存在だった。  この男と付き合うようになって数日、私は見違えるように綺麗になり学校でも目を惹く美少女となった。そんな私の変貌に友人達は驚きを隠せないでいる。 「急にどうしたのよ。そんなに綺麗になるなんて」 「お小遣いもずいぶん、あるみたいだけど、いい男でも見つけたの?」  友人達は口々に私に聞いてくる。“いい男”を見つけたことに違いはなかった。けれど、友人達に男のことを紹介する気にはなれなかった。見栄えがよくなえればよくなるほどに、男のことは紹介しづらくなる。まさか、男に頼んで彼氏を用意してくれなんてお願いできるはずがない。それに、男の存在が友人達が知ることになれば、きっと、彼女達も男にお願いごとをするに決まっている。
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