貢ぐ男

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 冗談ではないわ。男は私にとって都合のいい相手。それを、誰かにとられるなんて我慢できない。 「別に秘密なんてないわよ」  私は愛想笑いを浮かべてごまかす。これ以上、この話題に触れられるのは危険と感じていた。そんな時、友人の一人、綾子が口を開く。 「そういえば、祐子も少し前まで、あなたみたいに羽振りが良かったわね」  祐子とは私の友人の一人の名前だった。ここ最近、私に貢いでくれる男のことで浮かれて、忘れがちになっていたけれど、思い返せば祐子が死んでからまだ半月も経っていなかった。  祐子は今から半月ほど前に病気で死んだとされている。詳しい話は知らないけれど、自分の部屋で心臓発作に襲われ、そのまま息絶えたと聞く。ついこの間まで元気だった、祐子が死んでショックだった。一番の友達という訳ではなかったけれど、それでも仲のいい友達が死ぬということはショックだった。  きっと、その時のショックと最近の浮かれで祐子の存在を忘れていたんだ。わざわざ、彼女の遺品を友人同士で分け合ったというのに。 「どうしたの?急に黙り込んで」 「え?ううん。なんでもないよ」  そう言って、ごまかしてしまった。男のことはともかく、祐子のことを忘れていたなんて言ったらきっと、嫌な気分にさせてしまう。 「そういえばさ」  祐子の話題に触れたせいか、綾子が思い出したように言う。 「私達って、どうやって祐子と友達になったんだっけ?」 「それって・・・」  綾子の指摘に私達は目をパチパチさせた。祐子とは友人関係であったことに違いはない。けれど、いつかからと言われるとハッキリと覚えていない。高校に入った時からだったのか、それよりもずっと前だったのか。 「どうして、そんなこと急に聞くの?」 「いやね。ちょっと、気になってさ。祐子とは仲良かったけれど、いつから友達になったのかなって?」  いつから友達になっていたかなど、大したことではないように思える。確かに、亡くなる前まで私のように羽織りが良かったけれど、それ以前の彼女はあまり、いい印象を持っていない。どちらかと言えば、根暗で普段、家で何をしているのか分からない。そんな印象を受ける子だった。もっとも、友人となった今となっては昔の印象など関係なかった。彼女は私達にとって一番の友人であることに違いはないのだから。
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