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だけど、私には恐れしななかった。なんでも願いを叶えてくれる都合のいい男であることに違いはない。けれど、そこまでしてくれと頼んだ覚えはなかった。猫型ロボットの方がもう少し、融通が利いている。
「次はなにを・・・」
男は言う。次の願いを聞く為に。
「い、いや!」
後退りしながら男を拒絶する。尋常ではない。前々からおかしなところがあると思っていたけれど、これはやっぱりおかしい。
「次は」
男は言う。機械的に。死体を道路に置いて、血まみれのその手を私の方に伸ばす。
「どんな願いでも叶えます。次は誰を殺しますか?校則をつくった連中をですか?それとも、それに賛同する生徒や関係者ですか?気に入らない人間を幾らでも殺せます」
男は人を殺すことになんの躊躇もない。私はそれを異常と感じずにはいられなかった。
「いや、こないで!こないで!私の願いをこれ以上、叶えないで!」
恐怖にせき立てられ、私は声を張り上げて男を拒絶する。
その直後だった。私の目の前にピンク色の手帳が落ちた。
「これって・・・」
ピンク色の手帳。それに覚えがあった。所々やページに破れた痕がある手帳、破れていないページには私の字や綾子、友人達の字が乱雑に書かれていた。
----根暗
----消えろ
----なんで生きているの?
----さっさと死んでくれない?そっちの方が面白いから
ーーー-バーカwww
覚えがなかった。そんなことを手帳に書いたことなど。だけど、その内の一つは私の字であることに違いはなかった。そして、最後のページには不気味な模様が描かれていた。それは一般的に“魔法陣”と呼ばれるもの。それも、悪魔を呼び出すための。
「悪魔?」
そうだ。思い出した。私は半月前、亡くなった祐子の遺品の中から、この手帳をもらったんだ。彼女と仲良くなる前、私達は彼女をイジメていた。だけど、ある時を堺に私達は祐子を友人として受け入れるようになった。それこそ、魔法にでもかけられたかのように。ごく自然に。
(そんなことってあり得るの?)
自問自答する。ついこの間まイジメてた相手の羽織りがよくなったからと簡単にイジメがなくなるとは思えない。ましてや、あんな根暗な子を友人として受け入れるなんて。
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