貢ぐ男

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「そういう契約だから」  男は言う。私を見て。 「私は彼女と契約を結んだ。いや、彼女だけではない。悪魔はその魂と引き替えに、どんな願いでも叶える。上限もなく無限に。ただし、悪魔と契約を結んだ者はその間に記憶を失う。契約の有効期限は相手が願いを“拒絶”するまでの間。その間は、私はなんでも用意する下僕になろう。死体はもちろんのこと、宝石や金、友人だって用意できる」  男は言う。口元を吊り上がらせてケラケラと笑いながら。  私の全ての記憶は戻った。私はずっと、ずっと、みんなで祐子のことをイジメていた。彼女がどうして、私達を友人にしたのか分からない。細やかな復讐だったのかもしれない。イジメてた相手を友人にすることで、その愚かさを知らしめる為に。もしくは、今から逃げ出したくて。  そして、記憶が戻ったということは祐子の手帳に描かれていた魔法陣を元に悪魔と契約を結んだ私との契約切れを意味していた。 「それでは、契約通り、魂を抱きます」  男は言う。その悪魔のような顔で。
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