第1章(狂った連中)

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――自宅に着くと、父は居なかった。出勤したのだろう。 「二谷、朝ごはん食べて。冷凍のコンビニ弁当をチンしてね』  俺は無視して早速、ゲーム機をセットしてスイッチを入れる。しかし、画面が映らない。カセットを入れ直したり、端子をフーフーしてみたり、ゲーム機を叩いてみたり。何をしてもダメだ。 「あのババア、騙したな!? 壊れてるじゃないか!」 ――トラブルが起きる度に母は霊媒師の所へ連れて行こうとするが、俺は2度と行かなかった。騙されなかった。  俺は親の財布からお金を抜き取っては、ゲーセンで腕を磨く。 ――そして、高校に入ってから数週間後の日曜日。対戦型格闘ゲームで50連勝を達成した。脳からアドレナリンがドバドバ出てるのが感覚で分かる。ラスト5戦の時は緊張か武者震いか手が震えていた。快感だ。 「あんちゃん、凄いな!」ギャラリーがザワついてる。 「いえいえ」  もう乱入者は居ない。ストーリーをクリアして帰る。  俺に負けた連中の眼が怯えた小鹿に見える。片腹痛いわ。  俺はあの快感が忘れられず、また日曜日にゲーセンへ行く。  俺は早速、乱入する。バトル開始だ。  キャラを3人選び、3対3形式の格闘ゲーム。俺はキャラ1人だけで相手を全滅させる。  それにしても今日は獲物が少ないな。あと、1ステージでクリアしちまうぞ。  すると、乱入者が来た、獲物発見!  しかし、結果は惨敗……。二人組だ、筐体の影から見えた。得意キャラを交代させながら嵌め技も織り混ぜて、追い詰められ、劣勢のままタイムアウト。  俺は2度目の対戦を躊躇った。また負けたらどうしよう……50連勝の大台に乗った男だぞ!?  二人組は俺を倒すと、ストーリーを終わらせず行ってしまった。1人は誰か判った、田辺洋介だ。中学生に遅れをとるとは……!  俺は帰りに父方の祖父母の家に寄る。目的があった。  2人は出掛けてるようだ、玄関の鍵は開いていた。こっそり侵入する。年金を隠してる場所は大体分かる。  寝室の戸棚を下から順に開けていく。すると、一番上の棚に札束があった。俺は証拠は残さない。4万円だけ抜き取って、元通りにして去る。  俺は家電量販店に行き、新型ゲーム機と筐体であった対戦型格闘ゲームの家庭用がセットになっている物を買う。5千円の釣だ。またのゲーセン代にしよう。
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