第1章(狂った連中)

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 自宅に着いたのは夕方だった。昼飯はゲーセンの近くのフードコートで母の手抜き弁当を食べて。 ――数日後の朝、柔道連盟から封筒が届いた。居間で開封する。  合格と書かれていたら労働から解放される…………。俺は封筒の口をハサミで切る。ドキドキはすぐに終わった。封筒を逆さまにした時に柔道初段と書かれたカードが落ちてきた。 「もう労働しなくて良いんだよね!?」 「柔道はもうしなくていい。大人になったら嫌でも働く事になるぞ」  父は訳の解らない事を言う。 「俺はニートになるからいいよ。俺は一生分の労働をした」 「何だと!? お前をそんな風に育てた覚えはない!」 「結果が出てるじゃん。弱者をいじめるのが最高に気持ち良い」 「やっぱり先生の所へ連れて行くわ」 「バカじゃない? 神頼みで何とかなる話じゃない。お前らは子育てを誤った。何度もサイン出したのに、気付くつもりもなかった…………俺の口から言わせるな!」  俺は子供部屋に行き、ゲーム中の弟を蹴り飛ばし、弟のゲーム機を床に叩き付ける。 「何するんだよ!」弟は半泣きだ。 「だ~ま~れ~! 和谷(かずや)は何で柔道に行かない!? 何で労働をしない!? 何でストレスフリーで遊んでられる!? 俺はこんなに苦しんでるのに!」  声を聞き付け、父が来た。 「何をやっとるのよ!?」  父は俺の胸ぐらを掴み、聞き取れない、言葉にならない事を叫んで拳で頭を殴られる。 「てめえ! 刺し殺してやる!」 「そんな事してみろ! お前を殺してやるわ!」  こんな親だから、子供が狂う。 「明日、先生の所へ連れて行くわ。二谷はとり憑かれてる」 「バカな事を言うなー!」 「てめえら、親が人格否定しかしないから狂うんだよ!」  その日から俺は居間で寝る事になった。兄は全寮制の高校に入っている。ストレスフリーで良いな。  朝になると俺は煩くて起きた。父が居間に来て大音量でテレビを点けて二度寝していた。  俺は台所へ行き、包丁を持つ。早めに殺せば、出所も早い!? しかし、俺に殺す勇気はなかった。手が震える。自分が情けない。包丁をラックに戻す。  すると、母が来た。 「おはよう。お父さんが眠ってる内に、遊園地に行かない?」 「えっ!? 良いの?」 「ジェットコースターでもバンジージャンプでも好きなのを」 「行く行く!」
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