CASE6 倉島みのり

10/15
前へ
/92ページ
次へ
30分程経ち利樹さんは真剣な顔で話し出した。 「今回の件は俺達にはもうお手上げなんだよ。被害者は仁科早苗で20人。全員が溺死。誰1人水のあるようなところで死んでない。運ばれた痕跡もなく、髪や服にも痕跡はないが体の中には大量の池の水が見つかる。こんなの初めてだよ。不可解過ぎて呪いだなんだって声も上がってきてる。何か知ってるか?」 「今回の事件の被害者はたぶん本当に呪われてるんだと思います。黄泉遊びというのがその元凶です。」 「おいおい、まじかよ…やっぱりそういう事件か。」 「はい。黄泉遊びは死者の降霊術らしくそれにより被害者たちが不可解な死を遂げていると俺の中では結論づけてます。」 「死者を降霊しても虚しいだけじゃねぇの?生き返るわけでもねぇのに。」 「そうですね。」 「お前はやるなよ?」 「やると思いますか?」 「5年前のお前ならもしかしたらやってたかもな。」 「どうですかね。俺は過去は振り返らないんで。」 「お前の口癖だもんな。」 「ハハ、それより被害者の中の池の水は全部同じ水なんですか?」 「あぁ、そうだよ。どこの池かはまだわかってないけどな。」 「池がわかったら連絡下さい。」 「何かあんのか?」 「利樹さんにまだ紹介してないですけど、弥生のほかに従業員を雇ったんですよ。」 「へぇ、儲かってんな。」 茶化したように笑った。 「それが訳アリで。葛城雷って言うんです。身寄りも住む場所もなくて家で住み込みで働かせてるんです。見た目は幼いですけど20歳なんで法には触れてないですよ。」 「未成年なら問題だが20歳超えてるなら問題ねぇだろ。」 「雷は視えるんですよ。」 「まじか。」 「今日仁科早苗さんの後ろに小さな女の子が視えたと言っていたので今回の一件には恐らくその女の子が深く関わっているんだと思います。たぶんその池も。なので、わかり次第連絡下さい。」 「前の俺ならバカなこと言うなって笑い飛ばしていただろうな。」 「そうですね。まぁ傍から見たらこんなこと語り合ってる姿はバカらしいんでしょうね。」 「ほんとにな。また連絡するわ。今日はまだ時間あるか?久々だしもっと話しようぜ。もちろん仕事以外な。」 「そうですね!」 その日解散したのは深夜の3時だった。 事務所に帰ると、雷のそばで弥生と闇が眠っていたので2人に毛布をかけて俺はソファに横になり慌ただしい1日を終えた。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加