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急な夕立に襲われて俺は事務所までの道を全力で走っていた。
俺だけじゃない、みんな急いで屋根のある場所へ入ろうと走っている。
雨が強く前なんか見えない。
…はずなのに、彼女を見つけた。
雨なんかお構いなしに歩いている彼女を見ないふりは出来なかった。
「一緒に来い!」
いきなり手を引っ張り走り出したのに、彼女は何も言わず俺と一緒に走った。
事務所についてタオルを準備してストーブをつけた。
「とりあえず奥にシャワー室があるからそこで温まってこい。話はそれからだ。」
彼女はコクンと頷いて奥へと向かった。
彼女が出てから温かいココアを淹れた。
「まず、俺は怪しいやつじゃない。別に君を誘拐したいとかそういう考えは一切ないというのをわかってくれ」
コクン
彼女は頷いた。
「俺の名前は東谷嘉月だ。君の名前は?」
「葛城雷(カツラギライ)」
「葛城さんは高校生?」
「雷でいいよ。苗字は嫌いだから。」
「わかった。じゃあ雷は高校生か?」
「違う。」
「まさか、中学生?俺、犯罪者になるレベルなんだが…」
「違う。一応、20歳。」
「は?詐欺だろ。」
俺は雷をまじまじ見た。
背丈は162cmほどで細身、色白で幼い顔立ち。
髪は真っ黒で前髪は一列に整い後ろ髪は肩甲骨付近まできれいに伸びていた。
とても20歳には見えなかった。
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