がっこう

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美山高校の木造校舎は大きく三つに分かれていた。 授業を行うための教室が集まった本校舎、実習を行ったり、音楽室や視聴覚室がある実習校舎、そして部室や更衣室、体育館や道場などがある実技校舎。 体育館以外は全て木造で、磨き抜かれた校舎はさながら重要文化財の様だった。 玉彦と豹馬くん、須藤くんに案内され色々と見て回れば、もう時間は昼近くになっていた。 「上守。お前一週間くらい背中に『玉様彼女』って貼っておけよ……」 擦れ違う人に声を掛けられ説明に疲れた豹馬くんが半目で私を睨む。 前に香本さんが言っていたように、玉彦の人気って凄かったんだなぁと実感していれば、須藤くんは少しずれたことを言う。 「でもこの制服にガムテープ貼るのは、後がベトついて可哀想だよ」 「じゃあ背中に旗でも立てておけっ!」 「くだらん。帰るぞ。腹が減った」 本校舎の三階から二階へと降りる階段の踊り場。 そこに大きな全身を映し出す鏡の前で私は足を止める。
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