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「澄彦さん、まだ帰れないの?」
「まだだ。予定ではあと十日だぞ。そんなに早く帰って来てほしいのか」
「そういう訳じゃないけど……」
三人での食事が当たり前になっていたので、本当はちょっと寂しい。
でもよくよく考えれば、私が居なく、澄彦さんが外でのお仕事の時には玉彦は一人で食事をしていたはずで、そう考えると玉彦にとっては寂しくない食事なのかもしれない。
「明日も部活?」
玉彦は箸を置いて、礼をする。
そして私に向き直る。
「明日は休んだ。行く所がある。比和子も付き合え」
「どこ行くの?」
「色々と。月に一度の鈴白行脚だ」
「何それ」
「正武家のお役目の一つだ」
「……わ、わかった」
「気負う必要はない。見回りだ。須藤も行く」
「あ、そうなんだ」
てっきり二人で行くのかと思ったけど、正武家のお役目なら稀人も同行するよね。
豹馬くんより須藤くんの方が稀人としてまだ修業が浅いから、一緒に行くんだろうな。
ホッとして笑みを零すと玉彦が眉間に皺を寄せた。
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