はじまり

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どうして再び神守の力が目覚めてしまったのか。 私が思うに正武家に触発されたからだと思っている。 お父さんの故郷、鈴白村はこれといった観光も名産もない絵に描いたド田舎で、誇れるものといったら山々に囲まれた大自然くらいなものだ。 鈴白村の他に、鳴黒村、緑林村、藍染村、そしてあと一つは何だったかな、とりあえずこの地域はまとめて五村と呼ばれている。 その五村を取り纏めているのは村長等ではなく、鈴白村に屋敷を構える名家、正武家だった。 正武家は呆れるほどの昔、話によると平安くらいに時の帝の命を受け、鈴白村に根付くことになった。 彼らは都で不可思議な出来事を解決する役目を担っていたそうで、ある時都で厄災を振り撒いていたものを追い、辿り着いたのがこの鈴白村。 厄災のせいで村では人や作物に悪影響が出ていた。 それを祓い鎮めているうちに次々と正武家へ厄介事が持ち込まれ、鈴白の地を離れられなくなってしまった。 駄目押しとばかりに帝から、『鈴白を清浄の地とするまで都に戻ること罷りならん』と言われてしまって、結局正武家はある条件を出してそれを認めてもらった。 『鈴白を含む五村の地と、正武家の未来永劫の繁栄。現世(うつしよ)の如何なる物事は正武家に干渉せず』 要するに、五村の土地寄越せ、正武家を繁栄させろ、ついでに正武家に関することには首を突っ込むなと。 それが現代の日本でもまだ罷り通っている。 それだけ正武家のお役目が長く続き、大袈裟に言ってしまえば国絡みのタブーなんだと私は思っている。
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