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「比和子」
「うん」
「比和子」
「何よ、しつこいわね」
「私はたとえお前が何処の誰であろうと、想いは変わらぬ。お前もそうであろう?」
「……」
「比和子」
「……今さら何を言ってんのよ。玉彦は私に背を向けてしまったじゃないの。神守の者って呼んだじゃん……。流石の私だってそこまでされたら空気を読むわよ。変わらないとか言っても、突き放したじゃん……」
「それは……」
「多門に嫉妬して、暴走した私にムカついたとしても、あんまりな仕打ちだと思うわけよ……。離さないから離れていくなとか言ったくせして、離れてるじゃん。どうなってんのよ……」
私が顔を背けて呟くと、突然立ち上がった玉彦は目の前まで来て、そして私をひょいと肩に担いだ。
「ちょっ、降ろしなさいよ」
「断る」
そう言って玉彦は惣領の間を出て、離れを出て、澄彦さん側の母屋へと足を踏み入れた。
そして澄彦さんの私室の襖を断りもなく開け放った。
私はずっとその間、担がれたままだ。
いい加減頭に血が昇ってくる。
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