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澄彦さんはお布団に横になって、煙草の火をつけたところだった。
「どうした、次代。もう寝る時間だ。比和子はここに置いてゆけ」
澄彦さんは少しニヤついていた。
「断る」
「何だと?」
「断る、と言った。この馬鹿親父が、いい加減にしろ」
玉彦は苛立たし気に、私を降ろして、澄彦さんを見下ろして仁王立ちになった。
「先ほど比和子と話をして判った。裏で糸を引いて何を考えている」
「何のことやら父にはさっぱりだよ?」
澄彦さんは首を傾げて、ニコリと笑った。
「何が妻にするだ。ボケるのも大概にしろ。何か考えがあるのだろうと放って置いたが、もう我慢ならぬ」
「ええっ? 父は何のことやら……」
「比和子に手を出せぬことは分かっていた。比和子は神守の巫女だ。一生を捧げると仮にも私に誓っている。が、心変わりをしたのなら仕方がないと思っていたが、先ほどの会話で確信した。比和子の心はまだ私の元にある」
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