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「通山市の国明館高校から来ました。上守比和子です。よろしくお願いします」
美山高校の二年A組進学特化クラスの教壇の前で、私は頭を下げる。
疎らな拍手に姿勢を正せば、三十人くらいのクラスはほぼ男子。
セーラー服は二人だけ。
私は頑張って作った笑顔が引きつっているのを自覚していた。
夏休みの間、このクラスに編入するために猛勉強した日々を思い出す。
正武家の付き人で稀人と呼ばれる御門森南天(みかどもり なんてん)さんに、家庭教師をしてもらい、玉彦のスパルタ教育も受け、ようやく彼と同じ進学特化に入ったのは良かったけれど、男子ばかりとは聞いていなかった。
教室内には玉彦の他に、彼の稀人であり南天さんの弟の豹馬くんや同じく稀人の須藤涼くんの姿もある。
これだったら、村で初めて友達になった弓場亜由美ちゃんや香本さんがいる家政科のクラスの方が楽しかったんじゃないかと思う。
食物実習で料理もするって言ってたし。
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