がっこう

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「それではHRを……」 少し枯れた声の白石先生の言葉を聞きながら、私は木造校舎の窓から外を眺める。 広いグラウンドの向こうに校門。 その横に大きな緑を茂らせた桜の木が敷地内を囲む様に並んでいる。 お父さんのアルバムにあった桜の木。 親友の澄彦さんと、須藤くんのお母さんと写った卒業式の写真の桜。 「……以上です。では挨拶」 号令を掛けられ、ハッと私は立ち上がる。 一人だけ……。 皆は座ったまま礼をしていた。 その様子に笑い出したのは須藤くんで、つられてみんなも笑い出す。 だって普通、起立、礼、着席でしょうよ……。 私は真っ赤になりながら、座り直した。
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