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「柏手(かしわで)!」
九条さんの怒声が腹の底に響き渡り、無意識のうちに手を打つ。
すると一瞬にして視界が元に戻り、前を見れば汗だくで両手両膝をつく豹馬くんがいた。
一体どうなっていたんだろう。
息を調えた豹馬くんは私を見上げ、ニヤリと笑う。
「そう易々とオレの中には入れてやんねぇぞ……」
「面白くないですね、豹馬。少しは協力したらどうですか」
九条さんの冷ややかな視線に豹馬くんは眉を顰めて文句を言うのかと思ったら、素直に謝る。
ゆっくりと無言で立ち上がった玉彦が豹馬くんに手を貸しソファーに座らせる。
そしてさっきの豹馬くんの位置に立つ。
「次代、宜しいですか」
「良い。私は比和子に何も隠すものはない」
「良いお覚悟ですね。見習いなさい、豹馬。ではもう一度」
先ほどの手順で私は玉彦を視据える。
果たして彼の中には一体何が視えるんだろう。
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