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白光が私を再び包み、その中に。
薄紫と白い光が玉彦を包んでいた。
胎児の様に丸くなり、ゆらゆらと浮いている。
手を伸ばして触れようとすれば、眠っていた彼は目覚めて私を引き寄せ離さない。
暖かい。すごく暖かい。
心地よい腕の中で眠気に襲われる。
僅かに玉彦の口が動く。
声になっていないけど、何を伝えたいのかダイレクトに伝わってくる。
そうかここは心の中。
視えていた光は、その人が纏う命の光。
この中では誰も嘘がつけない。
「柏手!」
九条さんの声が聞こえる。
でも、私、ここから出たくないなぁ。
玉彦と一緒にいたい。
グイッと首根っこを掴まれ、一瞬にして現実に引き戻される。
私は九条さんに強制的に視ることを解除された。
一種のトランス状態から解放され、前のめりに倒れそうになれば玉彦の腕が私を受け止めた。
「大丈夫か、比和子」
「あ、うん……。大丈夫」
自力で立ち上がろうとしても身体に力が入らない。
よろけてもう一度玉彦の腕に収まる。
「やっぱり大丈夫じゃないかも……」
腕に縋り付き目に触れると、そこだけ熱い。
瞼を閉じると眼球がジンジンとする。
これが本当に視るってことなんだ……。
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