くじょう

30/36
848人が本棚に入れています
本棚に追加
/492ページ
「それは正武家様に御縋りするしかないですね。かの方たちはその為にいらっしゃいます。二の世界の者は神守や御門森に露払いさせ、禍だ、とかの方たちが無意識に判断した三の世界に在るものまでを祓い鎮められます」 「なのに澄彦さんや玉彦が肉体を持たないものを視られないのはどうしてですか?」 「かの方たちは視る必要がないのですよ」 「必要がない?」 「圧倒的なお力で無意識に祓ってしまうのです。ゆえに必要がない」 「でも神様まで視られないなんて」 「それも必要がないからですね。神であった神で無くなったものは祓い鎮める必要がある為に視られるはずです。あぁ、それと先ほどの隠ですが彼らは二と三の世界の狭間にいます。強い思いの為に一の世界でも視認できる隠は祓いの対象です」 段々と頭が混乱してきた。 とりあえず正武家は一の世界に禍をもたらし、実体化しているものを祓い鎮める。 白猿や隠や九児などのことだろう。 御門森や神守は二の世界のものを視て、露払いを行う。 あれ? でも正武家は無意識のうちに二の世界のものを祓ってしまうのだから、二家は必要なくない? 「あの……」 「なにも露払いだけが仕事ではありません。正武家様が御出座しになるとき、共に在らねばなりません。稀人は盾であり、時には矛にもなります」 私が疑問をぶつける間もなく、九条さんは答える。 彼はほんの少しの未来まで実は視えているんじゃないだろうか。 「さて、今日のところはこれまでとしておきましょう。宿題は忘れずに。あぁ、そろそろ痺れを切らし始めましたね。まだまだ未熟で在られる」 九条さんがそう言った五秒後にドアがノックされ、玉彦が迎えに来たのだった。
/492ページ

最初のコメントを投稿しよう!