あめの距離

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下足箱へ行って、靴を履きかえる。 明日が休みで良かった。 靴は間違いなく乾かないや。 足元ぐちょ濡れを覚悟して傘を手に取る。 「あっ、松本!ちょうどいい所に!」 下足箱の裏からひょこりと顔を出して、叫ぶようにそう言ったのは、同じクラスの男子の永田。 残念なことに帰る方向は一緒。 「どうせいれてって、って言うんでしょ」 「あったりー」 よろしく、と言いつつ永田はすり寄ってくる。 いや、近いって。 「もー、なら傘持ってよ」 「はいはい、松本は小さいからね」 傘を押し付けると永田はにやにやしながらそう言うから、とりあえず蹴りをいれた。 「じゃ、帰るぞー」 雨の中に一歩、踏み出して振り返る。 早く入れ、と言わんばかりの永田に、私の傘なんだけどなあと思いつつ、私も一歩踏み出す。 一緒に並んで帰るのはいつぶりだろうか。 雨の日もたまには悪くないかもなあ、なんて思っていたら鞄が浸水していた。
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